秘密の地図を描こう

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 どうやら、ザフト側で先行していた艦船があったらしい。だが、それはあちらとしても当然のことだろう。
 だが、問題なのはそれに対するオーブ――いや、この場合、セイランと言うべきか――の対応ではないか。
「……ここまで馬鹿だったとは思わなかったな」
 ユウナ・ロマのセリフを聞いた瞬間、バルトフェルドはそう言う。
「おそらく、前の対戦のアスハ代表の対応をまねしたのでしょうが……プラント側の認識が違いますからね」
 アスハはあくまでも中立という立場を崩さなかった。だからこそ、彼の言葉を表向きは信じた。
 しかし、セイランはブルーコスモスとのつながりが強い。前回のオーブ軍遠征の時もオーブの指揮を執っていたのは彼だ。それはわかっているからこそ、ザフトが素直に受け入れるはずはない。
「馬鹿が……」
 カガリが吐き捨てるようにそう呟く。
「自分がお父様と同じくらいの信頼を、世界から得ていると思っているのか?」
 思っているのだろう、とカガリは付け加える。
「愚かな方こそ、自分が偉大だと思うものですわ」
 ラクスは静かな口調でそう告げた。
「ウズミ様方のような方は、そういらっしゃいません。それが理解できないからこそ、彼は愚行を繰り返すのですわ」
 そして、と彼女は続ける。
「彼らにとって、自分以外の存在はどうでもいいのでしょうね」
 だから、そばにいる者達も《生きている人間》だと言う認識がないのだろう。
「キラとは正反対ですわ」
 彼はすべてを守ろうとする。そのためならば、自分が傷つくこともいとわない。
「だから、彼の元には人が集まるのですわ」
 それが、あの戦いを終わらせる契機になったではないか。彼女はそう続けた。
「そうだな。キラがいなければ、オーブは大西洋連邦の属国になっていたはずだ」
 カガリもそう言ってうなずく。
「ともかく、これであの馬鹿を排除することができるな」
 彼女はすぐに気持ちを切り替えると、こう言った。
「あいつの言葉が、オーブを危険にさらしている。それは事実だ」
 ジプリールのことだけであればしらばっくれられるかもしれない。だが、これが誰もが聞いていることだ。
「なら、ザフトの方々には悪役になっていただいた方がよろしいのでしょうか」
 少し脅しをかけてもらうべきかもしれない。ラクスはそう言う。
「そうだな。できれば、死者を出したくないが……」
 彼女が何を言おうとしているのかわかったのだろうか。カガリは顔をしかめながらこう言った。
「セイランの関係者には泣いていただきましょう」
 申し訳ないが、とラクスは口にする。
「……なら、軍用の工場がいいでしょうね。モルゲンレーテを通して、避難を勧告できますから」
 そばで聞いていたマリューがこう言ってきた。
「キラ君には内緒で事を進められますよ?」
 さらに彼女はそう続ける。
「なら、ニコルも巻き込みましょう」
 ラクスは微笑みながら言葉を口にした。
「彼には今、セイラン関係の施設を調べていただいていますもの。その中で一番被害が少なそうな場所を選んで、ザフトに攻撃していただきましょう」
 ピンポイントで、と彼女は言い切る。
「……それしかないだろうな」
 カガリも、そう言ってうなずく。
「では、ニコル君を呼び出す?」
 マリューがこう問いかけてくる。
「頼む」
 カガリの言葉に彼女は微笑む。そして、そのまま視線をミリアリアへと向けた。
「すぐ来てくれるそうです。キラの見張りはクルーゼさんに頼んだそうですわ」
 そうすれば、彼女は軽くウィンクをしながらこう言い返してくる。
「さすがはミリアリア」
 カガリがそんな彼女に笑い返す。
「当然です」
 胸を張る彼女に、誰もが笑い声をたてた。


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最遊釈厄伝